仮の世の仮の話や冷し酒 井上論天

「冷し酒」は暑い夏に、燗をせずに冷やした状態で飲む日本酒のこと。涼を求めて冷蔵庫や氷水で冷やす。「冷酒」ともいう。

掲句は、冷し酒を酌み交わしながら、「仮の仮の世の話」に興じているという。この世を「仮の世」と観じるのは、この世は永遠ではなく、いつかは消えゆく一時的な場所であるという仏教的な考え方が根底にある。「仮の話」がどのようなものか具体的には言っていないが、いずれにしても人の生死に関わる話題だろう。虚子晩年の作〈風生と死の話して涼しさよ〉を思い起こさせる味わいをもつ作品。『俳句四季』2026年8月号。


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