冬近む白雲の虚子樹の蛇笏 直人
「冬近し」は、立冬を前にして冬がすぐそこまで来ていること。「冬隣」ともいう。秋が終わりに近づくと、日暮れが早くなり、木枯らしが吹き、野山においても、日常生活でも冬の訪れを感じることが多くなる。
掲句は、冬の気配を感じる晩秋の頃、白雲や樹を眺めながら、敬愛する虚子と蛇笏の句風や人となりを思い浮かべての作品。自在な虚子の句風を「白雲」に、格調の高い蛇笏の句風を「樹」に譬えた。この比喩は、両者の生涯についても当てはまるかも知れない。甲斐の山中に定住土着の生涯を送った蛇笏に対して、虚子は、故郷の伊予を離れて生涯を過した。このような比喩は、両者の一面のみをクローズアップしてしまう憾みはあるが、両者の持ち味の違いを確かに捉えている。昭和52年作。『朝の川』所収。