今朝の巣に子燕の口ひとつ減る 柴田多鶴子

「燕の子」はその年に生まれた燕の雛や幼鳥のこと。春に日本へ渡ってきた親燕は巣作りをし、抱卵季を経て5月から7月にかけて雛が孵る。雛たちは、軒先などの巣から大きな口を開けて餌をねだったり、巣立ちの練習をしたりする。

掲句は、いつも大きな口を開けて餌をねだっていた子燕が、今朝は一つ減っていたという。巣立ったのだろうか、それとも外敵に襲われたのだろうか。毎日燕の巣を見上げて、子燕の成長を楽しみに見守ってきた作者には何とも気にかかるのだが、確かめようがないのだ。表現は平明で何の奇もないが、燕の子の成長を日々見守る作者の心の揺らぎが、一読手に取るように伝わってくる。『俳壇』2026年7月号。


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