おほあめの万緑は鯤ゆく如し 関悦史

「万緑」は初夏の頃の初々しい新緑から、梅雨を経てさらに力強さを増した満目の緑のこと。中国の宋代の詩人王安石の詩の一節「万緑叢中紅一点」に由来する季語。

掲句は、大雨を経ていよいよ濃くなった草木の緑を「鯤ゆく如し」と詠む。「鯤(こん)」は中国の古典『荘子』に登場する想像上の巨大魚。そのサイズは数千里にも及ぶという。巨大な魚という以外、「鯤」の外観は読者の想像に委ねられているが、たっぷり雨を含んだ満目の緑を、中国古代の想像上の巨大な生き物に譬えた作者の想像力の飛躍は快い。雨に濡れて陰翳を深めた草木の深々とした緑が、魚の鱗を連想させたのかも知れない。『文藝春秋』2026年7月号。


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