行く秋の虹の半分奈良にあり 直人
「行く秋」は、過ぎ去ろうとしている秋のこと。秋から冬へと移り変わる晩秋の時期にあって、秋を惜しむ寂寥感が込められている。
掲句は、奈良旅吟の一句。全句集に収められている略年譜によれば、作者はこの年11月、雲母大阪支社五十周年記念大会に出席し、飛鳥地方を散策している。「行く秋」には秋を惜しむ寂しさが感じられるが、他方、大きく架かる虹の半分が奈良にあるとの伸びやかな把握には、旅吟ならではの解放感がある。ぱらついて通り過ぎた雨の後、奈良町の上空に淡々と大きな虹。晩秋古都の佇まいを味わいながらの旅だったのだろう。昭和50年作。『日の鳥』所収。