「春の星」は春の夜空に潤んで見える柔らかく暖かさを感じさせる星のこと。冬の澄み切った空に鋭く輝く星とは対照的に、春の夜気(やき)の中でぼんやりと優しく光る。
掲句は、宵の口にベランダから「春の星」を振り仰いでの作品。老境にさしかかる頃になると、誰の胸にも、これまで縁のあった人の思い出が棲みついているものである。それは、忘れ得ぬ昔の恋人だったり、今は亡き肉親や恩師だったりする。その時は、頭上に光りはじめた「春の星」への親しみが、「胸に棲む人」に対する思いへと私を誘ったようである。令和8年作。
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