熟葡萄濃きともしびと隔らず 直人
「葡萄(ぶどう)」は、初夏の頃黄緑色の地味な小花をつけた後、8月から10月にかけて実が熟す。
掲句は、作者の身辺にある葡萄畑の実りの様を詠んだ作品。詠まれているのは「熟葡萄(うれぶどう)」と「濃きともしび」であり、作者の居宅或いは近隣の家々から洩れる「濃きともしび」からそう遠くないところに葡萄棚があり、熟れて収穫の時を迎えているのだ。灯に浮び出ている「熟葡萄」は、巨峰のように黒々と熟れた大粒の葡萄だろう。手塩に掛けてきた果樹が実りの季を迎えた充実感が伝わってくる。極度の省略と単純化が、作品の味わいと純度を深めている。昭和47年作。『日の鳥』所収。