廣瀬直人の一句(51)

秋冷の道いつぱいに蔵の影 直人

「秋冷(しゅうれい)」は秋も終わりに近づき、肌に触れる物や空気をひんやりと感じること。「冷やか」の傍題だが、「秋冷」と「冷やか」では、和語と漢語による言葉の質感の違いがある。

掲句は、果樹農家が点在している作者の在所(山梨県旧一宮町)を詠んだ作品だろう。一戸一戸に蔵があり、日が傾く頃その蔵の影が道いっぱいに覆っているという。情を抑えて描写に徹した句柄だが、「秋冷の」との漢語の硬いひびきが一句を引き締め、農村地帯でよく目にする光景を印象的なものにしている。季節感が風景のすみずみにゆきわたっている。昭和46年作。『帰路』所収。

,

コメントを残す