「風入(かぜいれ)」は夏の土用の頃、晴天の日を選び、衣類や書物などを外に出して陰干しし、風を通して虫害やカビを防ぐこと。「虫干」の傍題。
掲句は、蔵書の「聖書」と「悪の華」が並べられて、陰干しされている情景。「悪の華」は周知のように1857年にフランスの詩人シャルル・ボードレールが発表した詩集名。その内容は、人間の魂が天国と地獄の間で葛藤し、最終的に死へと向かう旅の叙事詩とされ、キリスト教的な世界観への反発とそれとの深い結びつきが一体となったもの。「聖書」と「悪の華」をぶつけることによって醸し出される詩情を、作者は、「風入」という日本的な情景、情緒の中に収めた。伝統俳句の枠の中に収めたといってもいい。ヨーロッパの教養人がこの句を読んでどのような感想を抱くか興味深いところでもある。『俳句』2026年6月号。