「春眠」は、春の長閑(のどか)な陽気の中で、いつまでも快い眠りを貪ること。中国・盛唐の詩人である孟浩然(もうこうねん)の漢詩の一節「春眠暁を覚えず」に由来する言葉。
掲句は、春眠のただ中を、巨船が通り過ぎたとの句意。眠っている最中のことだから、確かにその形を目にしたというよりも、巨船とおぼしき大きな塊が通り過ぎたというほどの意味合いだろう。覚醒三分眠り七分ほどのうつらうつらとした春眠の心地よさを乱すことなく、巨船は音もたてずに通り過ぎていった。虚実皮膜の境地である。『俳句四季』2026年6月号。