「春隣(はるとなり)」は、厳しい寒さのなかにあって、すぐそこまで春が近づいていること。晩冬には寒さが緩む日が多く、春の訪れを感じることが多くなる。梅や椿の蕾が解け始め、日一日と日脚が伸びてくる。
掲句は、街中や郊外の工事現場などに林立するクレーンを麒麟(きりん)に譬えて、春が近づいてくる季節の明るい気分を表出した作品。確かにクレーンが街の空に抜きん出て立っている様は、首の長い麒麟がぬっと立っているのに似ている。クレーンは、詩趣に乏しい現代風の機械装置だが、動物園の人気者である麒麟に譬えたことで、詩の素材になった。心に童心を宿していなければ、探り当てられない比喩である。『俳壇』2026年6月号。