廣瀬直人の一句(49)

秋深き木彫の線裾に消ゆ 直人

「秋深し」は、秋の深まる頃をいう。紅葉が見頃になり、冷ややかな大気の中で寂寥感が深まる頃である。

掲句には、「法隆寺百済観音その他(六句)」との前書きがある。 法隆寺の百済観音は、クスノキの一木造りで、人の身丈を越える長身とアルカイク・スマイルが特徴。掲句はその仏像の木彫の線に目をとめての作品。作者は、その流れるような衣紋の線刻を、「木彫の線裾に消ゆ」と繊細に表現した。写実に徹した作品だが、秋が深まる頃の季感が一句全体にゆきわたっている。昭和38年作。『帰路』所収。

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