廣瀬直人の一句(48)

瑞牆山は夜明けの容稲の花 直人

「稲の花」は、お盆前後の蒸し暑い日に、綿毛のような白い小さな花を午前中から昼頃にかけて咲かせる。受粉するとすぐに散ってしまう。ささやかな花だが、稲の実りにとって重要な植物の営みである。

掲句は、作者の在所から北に位置する「瑞牆山(みずがき)」を詠んだ作品。「瑞牆山」は秩父山塊の中でも異彩を放つ山容。周囲の緩やかな山並みとは対照的に、切り立った岩肌が積み重なる。作者はこの山の夜明けの姿を、折から咲き始めた「稲の花」とともに描く。近景の「稲の花」と遠景の「瑞牆山」の取り合わせは、甲斐の風土の分厚さを感じさせる。昭和48年作。『日の鳥』所収。

,

コメントを残す