しろじろと夜のさくらとなりゆくか 片山由美子

「桜」は花の中の花であり、『古今集』などに収められているように、古くから詩歌に歌われ、日本人に愛されてきた。多くの野生種が各地に広く自生するほか、公園や街路などに観賞用として植えられる。時間帯により「朝桜」「夕桜」「夜桜」などという。

掲句は、暮れぎわの桜を詠んだ作品。刻々と闇が降りてくる時分、それに抗するかのように夕闇に白々と浮かんでいる桜。「さくら」と仮名書きしたことで、眼前の植物としての桜が、心の中の桜のイメージと重なってくる。疑問の意の終助詞「か」は、暮れていく桜を前にした作者の心の揺らぎを表しているようだ。平明だが平凡を突き抜けた作品。『文藝春秋』2026年6月号。


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