廣瀬直人の一句(42)

存分の雷鳴北に甲武信嶽 直人

「雷(かみなり)」は積乱雲の中などで雲と雲、雲と地上の間で放電現象が起きたもの。電光が走った後に雷鳴がとどろく。夏の大気が貯えたエネルギーが、はけ口を求めて迸っているかのような現象。「雷鳴」は「雷」の傍題。

掲句は雷の轟く中、北に揺るぎなく聳え立っている甲武信嶽(こぶしだけ)を詠む。甲武信嶽は、拳(こぶし)を突き上げたような山容と評され、甲州・武州・信州の境に位置する奥秩父主脈の山。作者は、郷里の北に位置するこの山に、朝夕となく親しんできたのだ。「存分の」の措辞が、夏の最中の自然の底力を思わせる。平成20年作。『風の空』所収。

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