廣瀬直人の一句(41)

蝸牛山々も歳加へしか 直人

「蝸牛(かたつむり)」は陸生の巻貝。湿気の多い所を好み、草木の葉を食う。頭に二対の触角をもち、長いほうの先に目がある。雌雄同体で地中に卵を産む。

掲句は、眼前に「蝸牛」を点じて、緑滴るような故郷の山々も作者とともに歳を加えたことを詠む。末尾の終助詞「か」は、疑問・推量の意だが、ここでは、故郷の山々に向かいながら、自らに問うている趣である。「蝸牛」と山々と作者は、言ってみれば故郷の風土を形作る構成員である。山々も、作者とともに歳を加えていくという山々との一体感は、故郷に定住・土着している人ならではの捉え方、感じ方。「蝸牛」は、作者と風土をともにする生き物であるとともに、そのゆっくりとした迫らない動きは、悠久の時の流れを感じさせる。平成10年作。『矢竹』所収。

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