廣瀬直人の一句(40)

遠雷や背を向けて帯解いてゐる 直人

「遠雷」は遠くで鳴る雷のこと。「雷」の傍題。これから降り出そうとする夕立の前触れであったり、過ぎ去っていく雷の余韻であったりする。「遠雷」のまま遠ざかっていく雷もある。

掲句は、多少改まった会合などから帰って来て、日常に戻ろうとする妻を詠んだ作品。背を向けて帯を解いている妻に、作者は無言のまま労(ねぎら)いの視線を向けているのだ。「遠雷」は、一日の用事から解放された夫婦の間に漂うほっとした気分を表している。この句の雷は遠く轟くだけで、不安を掻き立てるような差し迫ったものではない。『遍照』所収。

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