廣瀬直人の一句(38)

青梅がぽとり眠つてばかり母 直人

「青梅」は梅雨の時期に実る未熟で青い梅の実のこと。固くて酸味が強い。梅酒を作るときに用いるのは、この「青梅」。

掲句は、昏々と眠り続ける老母に、時折庭先の青梅がかすかな音を立てて落ちる情景を詠む。黄熟を待たずに未熟なまま落ちる青梅。老母の眠りは、青梅が落ちる音にも覚める気配はない。安らかな母の眠りは、そのまま死へ続く眠りなのではないだろうか。「ぽとり」との擬音語が、母をそっと見守る作者の平穏な日々と胸中のかすかな不安を映し出しているようだ。平成5年作。『遍照』所収。

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