「鹿」は偶蹄目シカ科の哺乳動物。草食性で反芻による消化を行う。牡と牝はほとんどの時期別々の群れで生活を営む。牡は枝分かれした角を持ち、秋の交尾期には、その角を打ち合って牝を奪い合う。
掲句は、振り向いて人間の動静を窺って立つ鹿を詠む。鹿にとってみれば、人は謎の動物だろう。その人が攻撃を加えてくるのか、ただ歩いて通り過ぎるだけなのか、餌をくれようとしているのかなど、鹿は人の心を読もうとする。その様を、鹿が「こころ読む目」をしていると詠んだ。表面的な写生よりも一歩踏み込んだ把握と言える。『俳壇』2025年11月号。