「桜隠し」は桜の咲く頃に降る季節外れの雪のこと。桜を降り隠すように降りつつむ雪であり、桜の花房の上に凭れかかるように降り積もる水気の多い雪が想像される。もともとは新潟県や東北地方を中心とする雪国の方言であり、雪国に住む人々の風土感と春を待ち望む心が託されている言葉である。限られた地域で通用してきたいわゆる地貌季語の一つだが、
可惜夜の桜かくしとなりにけり 齋藤美規
などの佳句の積み重ねにより、1990年代以降歳時記に掲載されるようになった。「春の雪」の傍題として掲載されていることが多い。地域限定のローカルな言葉が俳句に詠まれることにより全国化していった一例だろう。
関東地方でも、桜の咲く3月下旬以降に時ならぬ大雪に見舞われることがあり、「桜隠し」の情景を目にすることがある。今後チャレンジしてみたい季語である。