桃の中でも、滴るばかりの果汁と柔らかく甘美な果肉を特徴とする「白桃」が店先に出回るのは初秋の頃で、桃の中では晩生種。
掲句は「白桃」を通して父子の情を詠んだ作品。作者若かりし日の回想の句として読みたい。父を憎むがゆえに、父が指先で触れた「白桃」まで憎くなったという。豊饒さと清潔さを合わせ持つような「白桃」が美しければ美しいほど、作者の父に対して抱いていた一途な憎しみが浮かび上がってくる。「けり」の詠嘆には、来し方の作者自身に対する万感の思いがあろう。『俳句界』2024年11月号。
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