「石榴(ざくろ)」はペルシア地方原産のザクロ科の落葉小高木。熟すと裂けて、赤く透明な果肉の粒が現れる。食べると甘酸っぱい。
掲句は石榴の実を、ぎっしりと涙が詰まっていると描写した作品。中の果肉の粒を「涙」に譬えた例句は〈実石榴の涙の粒に似しを食む 移公子〉など、歳時記に散見されるようだが、余り気にすることはないだろう。「ぎつしり」との擬態語は平凡なようだが、石榴の実の内部の充実感を的確に言い留めており、石榴以外の果物を想像させない確かさがある。『文藝春秋』2024年11月号。
kknmsgr
Δ