あんぱんの中の空洞百千鳥 常原拓

「百千鳥(ももちどり)」は春の朝など山野で多種類の小鳥が鳴き交わすさま。春を迎えた鳥たちの歓びが感じられる。

掲句は「あんぱん」の空洞と春を迎えた鳥たちの歓びの声を取り合わせた作品。菓子パンの中の空洞は誰もが目にする日常の些事であり、軽い失望を感じさせるごく卑近な素材だが、それとは関わりなく庭先では鳥たちが明るい日差しの中で鳴き交わしている。「春愁」という季語もあるように、春は華やかな季節でありながら、ふと心が曇る瞬間があるものである。自らの心の「空洞」を見せられたような、そこはかとない愁いや哀しみが感じ取れる作品。『俳句四季』2024年4月号。

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