俳句で「夜桜」といえば、夜の桜のことであり、また、夜桜見物を意味することもある。昼の桜も美しいが、夜、闇の中に仄かに浮かび出ている桜やライトアップされてくっきりと妖しい美しさを浮かび上がらせている桜は、人々を惹きつけて止まない。歳時記では「夜桜」が、通常、植物の部ではなく、生活の部に分類されているのも、夜の桜の周りには、その美しさを堪能しようとする人々の影が見え隠れしているからだろう。いつもなら誰もが寝入っている夜更けになって、夜の桜の周りに佇んでいる人を見掛けるのも、この季節ならではのことである。
