「緑雨」は「夏の雨」の傍題。夏に降る雨一般を総称して「夏の雨」というが、やや漠とした印象を与えることは否めない。その点、「緑雨」と表現することで、雨の特徴や個性がよりはっきりするように思う。雨に濡れて目に一層鮮やかな草木の緑も見えてくる。

「緑雨」は「夏の雨」の傍題。夏に降る雨一般を総称して「夏の雨」というが、やや漠とした印象を与えることは否めない。その点、「緑雨」と表現することで、雨の特徴や個性がよりはっきりするように思う。雨に濡れて目に一層鮮やかな草木の緑も見えてくる。

「茄子」は、インド原産のナス科一年生の野菜。どんな食材と取り合わせても順応する癖のない味わいとなめらかな食感が特徴で、煮物、焼茄子、天ぷら、炒め物、漬物など様々な調理法がある。最もポピュラーな夏野菜の一つ。
茄子には、紫紺色だけでなく白や緑のものもあるが、掲句からは、畑に栽培されている紫紺色の茄子を想像して欲しい。日暮れどきの茄子畑の辺に佇んでいて、自らの来し方・行く末を漠然と思っていた。既に人生の中盤を過ぎようとしているとの思いもあった。平成18年作。『春霙』所収。
桜は花の後、青い実を結ぶ。5~6月にかけて、その実が赤く、そして黒紫色に熟れる。桜桃(サクランボ)と違い、酸味や苦みが強くて生食には不向きだ。青→赤→黒紫という実の色の変化が、季節の推移を感じさせる。

本州、四国、九州に分布し、山地や深山に生える野生の多年草。ボタン科ボタン属に分類され、和名の由来は、山に自生しており、中国から渡来した芍薬に葉の形や蕾が似ているところからきている。春に発芽し、初夏に、白い5弁の花を茎の先に1輪咲かせる。2~3日で散る短命花。一般的な歳時記には掲載されていない。

蛾の多くは夜行性で、夏の夜の灯火を飛び回るので、「火蛾」「火取虫」などと呼ばれる。日本に生息するチョウ目の昆虫6000種のうち、「チョウ」と呼ばれるものは250種類で、他はすべて「ガ」であるという。「火蛾」といえば、速水御舟の日本画『炎舞』に描かれている、炎とともに舞い狂う蛾の姿が思い浮かぶ。
掲句は、山中の旅館の窓越しに見た「火蛾」が契機になってできた作品。その日は生憎の雨で、窓を打ったり、じっと張り付いたりしている蛾の後ろに、深々と山国の闇が下りてきていた。平成5年作。『河岸段丘』所収。