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俳句の庭

  • ほつと咲きほほと満ちゆく桃の花 高浦銘子

    2月 28th, 2026

    桃は晩春の頃、桜に少し遅れて淡紅色の花を咲かせる。華やぎのある桜の花と比べると、桃の花には親しみやすい鄙びた美しさがある。

    掲句は、咲き始めから満開になるまでの「桃の花」の風情を、「ほつと」「ほほと」という二つの擬態語により描写した作品。「ほつと」咲いた一輪の「桃の花」には、寒さからようやく解放された安堵が感じられ、「ほほと満ちゆく」には、咲き満ちていく「桃の花」の笑み零れるような豊かな風情が、掬い取られているように思う。桃が咲いていく間も季節は進み、四囲は春爛漫の季を迎える。『俳句』2026年3月号。

  • 干鰈(ほしがれい)

    2月 28th, 2026

    鰈(かれい)の鰭を取って内臓を抜いた後、薄塩をして天日に干したもの。冬から春にかけての旬の時期に仕込まれる。干し上がって骨が整然と透けて見える様は美しい。軽く炙って食べる。

  • 若草

    2月 27th, 2026

    春になって新しく芽吹いたばかりの、瑞々しく柔らかい草のこと。蓬(よもぎ)、芹(せり)、虎杖(いたどり)などのように、摘んで食用にする草も多い。「嫩草(わかくさ)」、「新草(にいくさ)」などともいう。

  • 殉教のルイス七歳雪降り降る 岩岡中正

    2月 27th, 2026

    「雪」は春の花、秋の月と並んで冬の美を代表する季語。降る雪そのもの、雪景色、雪が積もる様など、雪を詠む場合の表現の幅は広い。純白で静寂を感じさせる雪は、寒さとともに自然美や儚さを感じさせる。

    掲句は殉教地を訪れての作品。殉教地と言えば、江戸時代のキリスト教弾圧下で多くの信徒が処刑された長崎(西坂公園)や京都(六条河原)が思い浮かぶが、全国には他にも何カ所かあるようだ。墓碑に刻まれた殉教者の中に、「ルイス七歳」という幼い子の名を見つけた作者の心の衝撃や揺らぎが、「雪降り降る」とのリフレインを含んだ字余りの措辞に表れている。作者の心の揺らぎを飾らずに表出したこの措辞が、作品の余情・余韻を深めている。作品の決め手は作者の心であることを改めて認識させられる。『俳句』2026年3月号。

  • 廣瀬直人の一句(14)

    2月 27th, 2026

    山に浮びて剪定夫濃くただよふ 直人

    「剪定(せんてい)」は、その年の実の生りを良くするため、リンゴ、梨、桃、梅、葡萄などの果樹の芽吹き前に枝を刈り込むこと。おおむね3月頃に行われる。

    掲句は作者の住まう甲府盆地の果樹園での作業風景を詠んだもの。桃などの果樹に登って作業をしている「剪定夫」の四囲を、山々が取り囲む。作者にとって見慣れた景であったろう。「濃くただよふ」との一見冷やかな突き放した措辞に、見慣れた景を前にした作者の工夫の跡が見える。日頃親しんでいる身近な風土を新鮮に捉えるのは、決して生易しいものではないのだ。昭和47年作。『日の鳥』所収。

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