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俳句の庭

  • 芭蕉の推敲(21)

    11月 7th, 2023

    雪薄し白魚しろきこと一寸 芭蕉                            貞享元年10月、『野ざらし紀行』の旅中、伊勢桑名の東郊、浜の地蔵堂での作。芭蕉は手ずから蛤を拾い、白魚を掬ったという。白魚は春の季語だが、この句の「白魚一寸」には冬の季感があろう。杜甫の詩句「白小群分命、天然二寸魚」を踏まえ、二寸よりさらに小さな幼魚を一寸と表現した。初案「雪薄し」はそのときの実景だったと思うが、雪の白と白魚の白とで印象が分裂している。

    明けぼのや白魚しろきこと一寸 芭蕉                       『笈日記』によれば、初案の「雪薄し」について、芭蕉は、「此五文字いと口おし」と言って「雪薄し」を「明ぼのや」に直した。当日雪が降っていた事実を省略し、白魚の白に焦点を当てた。あけぼのの薄明りの中で、白魚の鮮烈な白さが一読目に浮かんでくる。山本健吉はこの句を、紀行中の句の白眉といっている。句の焦点をどこに定め、何を省略するかについて、学ぶ点の多い推敲だ。

  • 蠅取リボンゆらりチャーハンまだ来ない 笠原みわ子

    11月 7th, 2023

    蠅取リボンは蠅を捕まえる器具の一つで、粘着紙に誘引剤を塗布したものを垂らして蠅を捕らえる。最近は蠅も蠅取リボンも見かけなくなったが、酪舎などでは今でも使われているようだ。

    掲句は、「蠅取リボン」という季語を効果的に用いて、田舎町の中華料理屋の雰囲気を描き出した。夫婦二人でやっている駅前の古びた店に一人隅の方に席を占めた作者。だが、注文したチャーハンは中々出てこない。別に急ぐ用事もないので、無聊のまま、天上から垂れている蠅取リボンを眺めている。誰もが見聞きすることを一句に仕立てた作者の瞬発力を感じさせる。『俳句』2023年11月号。

  • 桜紅葉

    11月 7th, 2023

    サクラは他の木に先がけて紅葉し、他の木が紅葉し始める頃にはおおかた散ってしまう。「紅葉かつ散る」という季語があるが、少しずつ紅葉しながら同時に散っていく。

  • 櫨紅葉

    11月 7th, 2023

    ハゼノキは、ウルシ科ウルシ属の落葉高木で、関東南部から沖縄までの温暖な地域の常緑樹林内に自生するほか、庭園にも植えられる。晩秋の頃羽状複葉の葉がひと際鮮やかに紅葉する。

  • 芭蕉の推敲(20)

    11月 6th, 2023

    何とはなしに何やらゆかし菫草 芭蕉                            貞享2年3月27日尾張の国熱田の白鳥山法持寺で興行の歌仙の発句。芭蕉は『野ざらし紀行』の旅の帰途、大津から江戸に向かう途中に熱田を訪れ、連衆とともに白鳥山に詣でて三吟歌仙を巻いたという。『熱田皺筥物語』には、「白鳥山」との詞書が付されていることから、当山での嘱目か。具象性に乏しく、観念性が先行した作品に見えるが、日本武尊のゆかりの地である白鳥山に詣でて、日本武尊への崇敬の念を表出するに当たり、西行の伊勢神宮における歌「何事のおはしますかは知らねどもかたじけなさに涙こぼるる」を下敷きにしたものという(尾形仂)。「何とはなしに」の上五は、白鳥山の神域でこそ連衆の間で分かり合える表現だったのだが、作句の場を離れると、一般読者には曖昧で漠然とした表現に見える。

    山路来て何やらゆかし菫草 芭蕉                     『野ざらし紀行』では、「大津に至る道、山路を越えて」との詞書を付してこの句形に改案された。初案は歌仙の発句として連衆の前に披露したものの、白鳥山を離れて独立の句としてみたとき、いかにも具象性に乏しく、芭蕉の意には満たなかった。後に(おそらくは『野ざらし紀行』の旅後)、芭蕉は「山路来て」と初案に具象性を加え、京から大津へ向かう山路での作と虚構した。実際に『野ざらし紀行』の旅中にできた句ではないことに留意したい。「何やらゆかし」との初案の暗示的な表現はそのまま残したが、細部を表現しようとするよりも、却って菫草のもつ風情やそれを目にしたときの心の揺らぎが浮かび上がってきて効果的だ。                                   

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