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俳句の庭

  • 廣瀬直人の俳句(1)

    5月 17th, 2024

    冬近む白雲の虚子樹の蛇笏            直人

     廣瀬直人の第三句集『朝の川』所収の一句である。この句では、「白雲の虚子」と「樹の蛇笏」が対比されており、作者の虚子観、蛇笏観が窺われて興味深い。このような二物の対比は、遠近の対比を含め俳句の基本的な骨法の一つである。二人の俳人を対比した作としては、他に、

    たとふれば子規雛あられ虚子団子    兜太

    霜夜とて胡桃楸邨栗波郷                 繁子

    などの作が思い浮かぶ。このような作品においては、当然ながら、譬えにより、対象の本質を大掴みに捉えるとともに大胆な捨象が行われるので、言葉で表現した途端に、表現しきれずにそこから洩れてしまう部分が多いことを承知しておかなければならないが、掲出のどの句も、的確に子規、虚子、蛇笏などの本質やその特徴的な一面を捉え得ている。

     兜太の作は、子規、虚子それぞれの作品よりも、両者の人間、特に世の趨勢に対する身の処し方を思い浮かべると、その比喩や対比が、成程そういう見方もあるなと納得させられる作品である。

      一方、直人作は、それぞれの人となりよりも、もっぱら作品から受ける印象に焦点を絞った作である。「白雲の虚子」、「樹の蛇笏」との比喩は、両者の長い句歴にわたる諸作を念頭に置くとき、それぞれ的確な比喩と思わざるを得ない。それは、虚子、蛇笏の諸作に対する作者独自の見方を示したというよりも、両者の俳句に対して大方の誰もが漠然と抱いている印象に、比喩の形でくっきりとした輪郭を与えたものといえる。虚子は、主宰する「ホトトギス」門下の俳人に対しては客観写生を唱導しながら、自らは、

    年をもつて巨人としたり歩み去る      虚子

    など、そうした自らの指導理念に囚われない自在さ、大胆さで句を詠んだ。一方、蛇笏は、甲斐山中に定住、土着しながら、

    芋の露連山影を正うす                蛇笏

    のように、風土のもつ巌のような存在感を作品に定着させた。

     そして、この直人作の比喩に倣って言えば、龍太の作品、特に、円熟期の作品には、蛇笏と同様の定住、土着の生涯だったにも拘らず、「樹」よりも「白雲」の印象があり、一方、直人の作品には、一貫して、「樹」の印象があろう。

  • 草藤

    5月 17th, 2024

    マメ科の蔓性多年草。全国の原野や山麓などの草地に生える。初夏・仲夏のころ、葉腋から花穂を上向きに出し、赤紫色の蝶形花を密集して咲かせる。緑肥(田畑の肥料)や牧草として利用されることもある。

  • 麦の秋

    5月 17th, 2024

    麦が黄熟し刈り入れ間近な5月下旬頃をいう。日に輝く黄金色の穂は美しく、麦畑を風が吹きわたるときの乾いた音も耳に心地よい。この時季は、麦にとって収穫の「秋」に当たる。「秋」には百穀成熟の意味がある。「麦秋(ばくしゅう、むぎあき)」ともいう。

  • 濡れてゐる空に加はる初燕 和田順子

    5月 16th, 2024

    燕はほとんどが夏鳥として、春に南方から日本各地に飛来し、秋には帰って行く。その年の春初めて見かけるのが「初燕」で、関東近辺では3月下旬から4月頃に見かけることが多い。素早く滑らかな飛翔が印象的だ。

    掲句は空高く飛翔する「初燕」を描き出した作品だ。「濡れてゐる空」は春先の明るい雨空を思わせる。既に雨は降り止んで、雲間から太陽の日差しが差し込んでいるかも知れない。雨が降るなどして潤っている空と「初燕」の取り合わせには、作者の春を迎えた喜びが表れている。『俳壇』2024年6月号。

  • ががんぼ

    5月 16th, 2024

    双翅目ガガンボ科の昆虫。蚊を大きくしたような姿から、「蚊の姥(うば)」ともいわれる。細く長い脚が特徴だが、取れやすい。花の蜜を主食としていて、蚊のように人に害を与えることはない。

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