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俳句の庭

  • 光散らかし乗込みの鮒の水 柴田多鶴子

    6月 15th, 2025

    「乗込鮒(のっこみぶな)」は春になって水温が上がり、産卵のため小川や水田に群れをなして勢いよく乗り込んでくる鮒のこと。

    掲句は鮒の乗っ込みのさまを、水の照り返す光に焦点を当てて生き生きと詠む。自ずから、水蒸気でけぶったような春の田園風景が目に広がる。「散らかす」との上五がいい。通常は人の日常生活に関して使われるごくありふれた言葉だが、水の光の形容として用いられると、句の中で新鮮な響きをもつ。『俳壇』2025年7月号。

  • 代搔きのひかり播磨灘のひかり 森ちづる

    6月 14th, 2025

    「代掻き(しろかき)」は鋤き起こした田に水を入れ、田の底を掻きならし、肥料を土中に混ぜること。田植えの前の作業の一つ。

    掲句は「・・・のひかり」のリフレインにより、播磨灘に面した代掻きの田圃の大景を描き出した。播磨灘は淡路島、小豆島、四国、本州で区切られた瀬戸内海東部の海域。鯛などの好漁場という。播磨の国、播州といった旧国名のもつ歴史の厚みを感じさせる海域名である。何の説明も加えず、「・・・のひかり」と並置したところがいい。一読、その場に居合わせたような気分になる大柄な一句。『俳壇』2025年7月号。

  • 梅雨寒

    6月 14th, 2025

    雨が降り続く梅雨の頃の冷えのこと。「梅雨冷」ともいう。日本列島に沿って梅雨前線が停滞し、その北側のオホーツク海高気圧の冷たい空気が日本列島に吹きつけて起こる。薄着になった衣服の上に一枚羽織ったり、布子を着て農作業をしたりする。

  • 五月晴(さつきばれ)

    6月 14th, 2025

    梅雨の時期の晴天をいう。「五月」をサツキと読む場合は、旧暦・陰暦の5月のことで、新暦ではほぼ6月頃に当たる。「五月晴」といえば、早苗を植える時節の梅雨のただ中の晴れ間。炎暑の訪れを予感させる晴れである。五月(ごがつ)のさわやかな晴天とは意味を異にすることに注意が必要だ。しかし、近年「五月晴」は新暦の五月(ごがつ)の晴れの意味でも使われるようになってきており、本来の意味合いからいえば誤用だが、既に定着したといっていい。句や文章を読む場合は、いずれの意味かを文脈から判断するほかないだろう。

  • 金亀子抛り上げたる宙で覚め

    6月 13th, 2025

    「黄金虫(こがねむし)」は甲虫目コガネムシ科の昆虫。黄金虫とも表記する。金緑色、青銅色などの金属光沢がある。夏の夜、灯火などへ飛び込んでくる。指で小突くと死んだふりをしてポトリと落ちる。

    掲句は昼間野原で捕まえた仮死状態の金亀子を宙に抛り投げたときの作品。掌の上で死んだようになっていた金亀子が、投げ上げた途端、地面に落ちずに飛び去ったことに新鮮な驚きがあった。マツヨイグサの花びらを食べていた金亀子だった。平成21年作。『春霙』所収。

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