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俳句の庭

  • 扇状地から押してくる暑さかな

    5月 25th, 2025

    盛夏の頃、北太平洋高気圧から吹き出す風が高温と湿気をもたらし、日本列島はたびたび耐え難い暑さに見舞われる。盆地や内陸部の暑さはひとしおだ。

    掲句は、山梨一宮の広瀬直人主宰宅を訪問したときのことが契機になった一句。折からの好天の下、先生の自宅の周辺を散策した。歓談の中で、葡萄畑の彼方の暑にけぶる山裾を指さしながら、〈あそこが扇状地だよ。〉と教えてくれたことが、今でも思い起こされる。甲府盆地の夏の暑さは手強いが、果樹農家にとっては秋の実りを約束してくれる暑さでもある。平成25年作。

  • ギヤマン

    5月 25th, 2025

    ガラスをカットして模様を刻んだ器。細工を施したガラスのコップ、皿、花器などを総称していう。涼しげな感じから夏料理などに用いられる。「切子」「ビードロ」「カットグラス」ともいう。なお、 江戸時代にはダイヤモンドのことを「ギヤマン」と称した。オランダ語diamantの訛(なま)りともいわれる。当時、ガラス細工にダイヤモンドを用いていたことから、「ギヤマン」がガラス製品全般を指す言葉になっていったという。

    下の写真は店に並んでいる「薩摩切子」。

  • 畦塗(あぜぬり)

    5月 25th, 2025

    田植を前にして、畦をしっかり塗り固めること。田を鋤き終わった後、田の水が漏れて施した肥料が流出しないように、また畦土が崩れて田を狭めるのを防ぐために畦を田圃の泥土で塗り固める。田植え前の作業の一つで、今は畦塗機が普及するなど機械化が進んでいる。関東近辺では田植え前、5月下旬から6月頃に行われる。

  • 新季語探訪(20)

    5月 24th, 2025

    「海の日」は国民の祝日の一つ。祝日になったのは1996年で、当初は7月20日だったが、2003年以降ハッピーマンデー制度により7月の第3月曜日となった。海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う日とされる。もともとは「海の記念日」で、1876年(明治9年)の7月20日、明治天皇が東北巡行を終え、船で横浜に着いたことから、戦前からこの日が、海事関係者を中心に祝われる日だったという。

    俳句の季語として定着したのはおおむね2000年代。「こどもの日」「体育の日」などとともに、国民の祝日が季語として定着した一例。歳時記の例句には、                            海の日も干して炊ぎて漁師妻 福永鳴風                 などの句が見える。「海の日」はこの季節のもつ解放感や明るさが感じられる言葉であり、明治天皇云々の来歴にそれ程こだわることなく広やかな心で詠んでいきたいと思う。

  • 葭切や蛇行の跡の水明り

    5月 23rd, 2025

    「葭切(よしきり)」はスズメ目ヒタキ科の夏鳥。初夏の頃南方から飛来して全国の水辺の葦原で営巣する。水辺の葦に止まって「ぎょっぎょっ」と大きな声で鳴くので「行々子(ぎょうぎょうし)」との別名もある。

    掲句は越谷の元荒川周辺を訪れたときの作品。越谷は、加藤楸邨の俳人としての出発点となった地で、古利根や元荒川など水辺の多い土地柄でもある。度々流域を替えた荒川の蛇行の跡が、池になって残っていたりする。夏の烈日を遮るもののない水辺の葦原で、葭切が頻りに鳴いていた。坂東の暴れ川の名残がそこにあった。平成18年作。『春霙』所収。

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