「雁来月(かりくづき)」は葉月(陰暦八月)の異称。陽暦ではほぼ9月にあたる。北の国から雁(かり)が渡ってくる月だ。
9月は依然として昼間の残暑は厳しいが、夜は心地よい涼気が四肢を包む頃だ。めっきり夜が長くなってくる。月を見上げていると、渡って来る雁の羽音が聞こえてくるような気がする。「闇に親しむ」というのは、その頃の夜の実感そのままの措辞。平成17年作。『春霙』所収。
「雁来月(かりくづき)」は葉月(陰暦八月)の異称。陽暦ではほぼ9月にあたる。北の国から雁(かり)が渡ってくる月だ。
9月は依然として昼間の残暑は厳しいが、夜は心地よい涼気が四肢を包む頃だ。めっきり夜が長くなってくる。月を見上げていると、渡って来る雁の羽音が聞こえてくるような気がする。「闇に親しむ」というのは、その頃の夜の実感そのままの措辞。平成17年作。『春霙』所収。
秋晴れは、秋の空が青々と澄み、高々と晴れわたること。ものの輪郭が明快で、吹きわたる風も爽やかだ。
掲句は、たまたま馬場で飼われている小屋の兎を金網越しに覗いたとき、その目の澄みが心に残ってできた作品。兎の目に映る空や木々や馬場の建物など何から何までが、折りからの秋晴れの澄んだ空気の中で、くっきりと息づいていた。「一部始終」には万物という意味だけでなく、一日の時間の経過をも表現したつもりである。当時せっせと応募していた毎日俳壇で、飯田龍太選の特選となった思い出の一句でもある。平成5年作。『河岸段丘』所収。
学校の夏休みや(社会人であれば)夏季休暇が終わることを「休暇明」「休暇果つ」といい、秋の季語になっている。夏の終わりの物憂い感じと、新学期を迎えたり仕事が再開したりする爽やかな期待感とが入り混じる。
掲句は、夏季休暇が終わりこれから出勤しようとする朝、近所の茶畑に目を遊ばせていてできた一句。茶の木は生長が早く、刈り込んでも刈り込んでも楉(若い小枝)を伸ばす。吹きわたる風に揺れる楉が、夏の名残を感じさせた。平成11年作。『河岸段丘』所収。
めなもみ(豨薟)はキク科の一年草。山野の道端や荒地、畑、草地に生え、草丈は1メートルほど。仲秋の頃枝先に黄色い頭花をつける。花の下に粘液を出す苞があり、粘毛のある実とともに動物や人の衣服につく。
掲句は近くの川の辺を散策していてできた一句。川の匂いは川面を吹きわたる風の匂いでもあるが、夕暮の川風の中に佇み、瀬音に包まれながら、暮れていくわが身を思った。既に壮年期。秋の日暮れどきは、目に見るもの聞くものにつけ、人を沈思に誘うようだ。平成14年作。『河岸段丘』所収。
焼酎は日本の代表的な蒸留酒。アルコール度数が高く、比較的安価なので、庶民的な酒として浸透している。麦焼酎が一般的だが、甘藷焼酎、蕎麦焼酎、黍焼酎なども知られている。
掲句は、長野への旅行中買い求めた蕎麦焼酎を飲みながら、酒器をあれこれと想像してできた作品。とある美術展で目にした瀬戸黒茶碗の柔らかみのある端正な姿が記憶からよみがえってきた。焼酎はお湯などで割って飲むのが普通だが、何も混ぜずに生(き)のままで飲むのも、蕎麦の香りと旨味をより実感できる。なお、「瀬戸黒」は瀬戸黒茶碗の略称で、桃山時代に美濃窯で焼かれた黒無地の茶碗のこと。平成29年作。