冬木は、落葉樹、常緑樹のいずれにもいうが、特に葉を落とし切った落葉樹には冬木らしい趣がある。
掲句は近くの疎水べりの枯桜の趣に晩年の父の面影を重ねてできた一句。「父情」は一般的な用語ではないが、〈冬ふかむ父情の深みゆくごとく 龍太〉が念頭にあって思い浮かんだ言葉。生前の父の心を十分汲み取れなかった自分自身を、反省を込めて振り返る思いもあった。平成29年作。
冬木は、落葉樹、常緑樹のいずれにもいうが、特に葉を落とし切った落葉樹には冬木らしい趣がある。
掲句は近くの疎水べりの枯桜の趣に晩年の父の面影を重ねてできた一句。「父情」は一般的な用語ではないが、〈冬ふかむ父情の深みゆくごとく 龍太〉が念頭にあって思い浮かんだ言葉。生前の父の心を十分汲み取れなかった自分自身を、反省を込めて振り返る思いもあった。平成29年作。
「臘月(ろうげつ)」は師走、極月などとともに旧暦12月の異称。「臘」は、冬至後の第三の戌の日に行われる中国の祭のことで、猟の獲物が神や祖先に祀られるという。この「臘」が転じて、年の暮や旧暦12月を「臘月」とも呼ぶようになった。
掲句は長野の野辺山高原から東に連なる秩父山系の山々を眺めていてできた一句。山々は夕映えながら、山襞は濃い翳となっていた。それぞれの山襞には集落があり、古くから人々が定住して生活を営んでいることを思った。上五は「十二月」「極月や」でもよかったが、「臘月」という古い言葉の味わいを活かしたかった。平成16年作。『河岸段丘』所収。
秩父夜祭は12月2日、3日に行われる秩父神社の例大祭。各町内から笠鉾などの山車が出るほか、夜は神輿の神幸も行われる。
掲句は秩父夜祭を見物したときの作品。神社境内や道沿いにたこ焼き、焼きそばなどの屋台が並んだが、その中の一軒で熱々の猪汁を啜った。南には武甲山が真っ黒に聳ち、冴え冴えとした宵の空に星が光を放った。平成29年作。
極月は師走の傍題で、陰暦の12月の異称だが、陽暦の12月にも使われる。新年の準備やクリスマス・忘年会などを挟みつつ、過ぎようとしているこの一年をひとり振り返る月でもある。
掲句は年の暮が迫ってくるころ、吾野の山道を辿りながらの一句。杉などの暗い針葉樹を抜けると明るい落葉の道に出た。しんしんと音の絶えた山道では誰とも会わなかった。平成28年作。
冬型の気圧配置がもたらす北西の季節風は日本海側に雪を降らせた後、太平洋側には乾燥した冷たい風となって吹き下ろすので、冬季は晴天が続くことになる。
冬の早朝の散歩は暗い中を歩くので、星を見ることが愉しみの一つだ。初冬の頃はオリオン座が西に傾き始める位置にあり、その左にシリウスが青白い光を放つ。続いて双子座が中天にかかる。東の地平線には金星が上り、私が近くの疎水べりを歩くときは、この星を目印にする。木枯1号が夜中吹き荒れたときなどは、夥しい星が仰がれる。冬旱は冬の関東地方の風土そのもの。令和3年作。