「龍の玉」はユリ科の多年草ジャノヒゲの実のこと。山中の暗い林床に自生するほか、庭園などの木蔭に植えられる。冬、株元にコバルト色の実が生る。
掲句は高麗王廟での作品。この王廟は、7世紀に日本へ渡来した高句麗の王族高麗王若光の墓とされ、日高市の聖天院にある。石を重ねただけの素朴な石塔を眺めながら、渡来の民がこの地に根付いた歳月の永さを思った。王廟の縁には、ジャノヒゲが植えられてあった。平成11年作。『河岸段丘』所収。
「龍の玉」はユリ科の多年草ジャノヒゲの実のこと。山中の暗い林床に自生するほか、庭園などの木蔭に植えられる。冬、株元にコバルト色の実が生る。
掲句は高麗王廟での作品。この王廟は、7世紀に日本へ渡来した高句麗の王族高麗王若光の墓とされ、日高市の聖天院にある。石を重ねただけの素朴な石塔を眺めながら、渡来の民がこの地に根付いた歳月の永さを思った。王廟の縁には、ジャノヒゲが植えられてあった。平成11年作。『河岸段丘』所収。
「寒日和」は厳寒中の晴天のこと。「寒晴」ともいう。寒の入りから節分までの約30日間の「寒」の時期を中心に、厳しい寒さが続く。太平洋側では、晴天が続くことが多い。
掲句は、桜田通り沿いのプラタナスを詠んだもの。植えられたのは昭和初期。関東大震災からの復興のシンボルとしての意味合いもあったようだ。夏に茂らせる瑞々しい緑の葉もいいが、葉を落としきった冬の姿も捨てがたい。その瘤の多いごつごつした幹には、手で触れてみたくなるような硬質の存在感がある。平成7年作。『河岸段丘』所収。
「息白し」は、気温が低い冬の朝などに、吐く息に含まれる水蒸気が冷やされて白く見えること。
掲句は奥武蔵の原木場での所見。とある無人駅の前に、スギやヒノキの丸太が山積みになり、黒いジャンパーを着込んだ男たちが小さな手帳を手に糶(せり)の最中だった。この辺りの材木は西川材と称する地域のブランド材。江戸時代には、この地域の木材を筏で江戸まで流送していたという。平成6年作。『河岸段丘』所収。
「秩父夜祭」は埼玉県秩父市の秩父神社の例大祭。毎年12月3日に行われる。かつては絹の大市のフィナーレを飾る祭りであり、お蚕祭と呼ばれた。
掲句は、祭当日、秩父神社の神馬舎に立ち寄っての作品。御神幸行列に供奉する2頭の神馬(しんめ)が、静かに出番を待っていた。夜闇が下りてくるとともに、盆地の大気は冷え込み、人々の吐く息も神馬の息も白々と見えた。見るもの聞くものに、祭が佳境に入る前の緊張感が感じられた。平成23年作。
四季を通して月は見られるが、「冬の月」は寒さの中で仰ぐ月であり、その冴え冴えとした光には静かで研ぎ澄まされた美しさと荒涼たる寂寥感がある。
掲句は眼前に昇った「冬の月」を詠んだ作品。遮るもののないその冴え冴えとした月光の中で胸裏に浮かんだのが、かつて見た釈迦如来像や阿弥陀如来像の印を結んだ繊い指だった。人を差し招くような、また、拒むような如来の手の印象が、長い間私の心の中に残っていたものと見える。平成19年作。『春霙』所収。