屏風には山を画書いて冬籠り 芭蕉 元禄2年作。『蕉翁全伝』に「平沖にての事」との注がある。平沖(へいちゅう)は伝不詳だが伊賀の人。「おくのほそ道」の旅の後、故郷伊賀に滞在中の作。主人の冬籠りの様を描写した作品だが、「山を画書いて」が単なる説明に終っており、やや平板な作品であることは否めない。
金屏の松の古さよ冬籠り 芭蕉 前掲の「屏風には」の作とは別の作品として整理することもできるが、『三冊子』によると前掲の句の改作という。元禄6年10月9日付けの許六宛真蹟書簡には「野馬と云ふもの四吟に」との前書きがある。弟子たちと巻いた連句の場で、意に添わなかった4年前の旧作をふと思い浮かべて、改めて想を練ったのかも知れない。松の古さを言ったことで、金屏の古さを暗示し、富家の冬籠りの情趣を形象化した。改作前と比べ、画竜点睛の妙を得た作品といえる。