我富めり新年ふるき米五升 芭蕉 貞享元年新年の作。前年の冬入居した第二次芭蕉庵には、五升入りの瓢の米びつがあった。わずかな米の貯えを「富めり」とする逆説的表現で、貧を衒っている感じが露骨に表れている。改案の 似合わしや新年古き米五升 芭蕉 には、自嘲的な口吻がある。初案、改案とも、上五の主観を露に表出した措辞が、作者が言いたかった点なのだろうが、句の味わいを損なっていることは否めない。新年の句であればなおさらである。
春立つや新年ふるき米五升 芭蕉 最終的にはこの句形になった。貧の衒いや自嘲など作者の様々な情念は、立春を迎え、新年を迎えた晴れやかな思いに包み込まれた。その結果、物は乏しいながらも心豊かな芭蕉庵での暮らしの様が浮かび上がった。なお、この年の立春は旧年12月22日。