植えた早苗が伸びて田圃は日に日に青々としてくる。稲が生長した田の面を爽やかな風が吹きわたる。
近江という旧国名は琵琶湖をかかえる今の滋賀県のこと。古くは松尾芭蕉から森澄雄まで、多くの俳人を惹きつけてきた地。作者も、その近江を訪れて青田風に吹かれているのだ。「吹かれに来たる」との措辞に風狂の味わいがあろう。『俳壇』2023年9月号。
植えた早苗が伸びて田圃は日に日に青々としてくる。稲が生長した田の面を爽やかな風が吹きわたる。
近江という旧国名は琵琶湖をかかえる今の滋賀県のこと。古くは松尾芭蕉から森澄雄まで、多くの俳人を惹きつけてきた地。作者も、その近江を訪れて青田風に吹かれているのだ。「吹かれに来たる」との措辞に風狂の味わいがあろう。『俳壇』2023年9月号。
半夏生は七十二候の一つで、陽暦では7月2月頃。まだ梅雨が明ける前で雨がちの日が続く。
掲句は風音に耳を澄ませて、季(とき)の移ろいを感じ取っている趣の作品。風音に芯があると感じられたのは、雨の前兆の風だからだろうか。聴覚の捉えたものに焦点を絞って、繊細な季節感を働かせている。『俳壇』2023年9月号。
「星涼し」は「夏の星」の傍題。暑い夏だからこそ、夜空に光を放つ星に涼しさ求める。
掲句の脱皮した後の抜け殻は、蝉やバッタなどの昆虫だろうか、それとも蛇などの爬虫類だろうか。いずれにしても作者はその「脱皮の裂け目」に、脱皮して生まれ変わろうとするその生き物の意志を見たのだ。「迷いなき」との主観を含む措辞に、作者のこの生き物に寄せる思いが表れている。涼気の中の星々も、地上の生き物の脱皮を、天上から見守っているようだ。『俳句四季』2023年8月号。
「夏満月」は昼の暑さから解放されて、屋外や窓辺から見上げる満月。涼しさが降ってくるような夜空に光を放つ。
掲句は、夏の満月を「枳殻のいろ」と形容したところがポイント。枳殻(きこく)はカラタチの別名で、秋に黄色く熟すが酸味が強く、漢方の材料になるものの食用には適さない「枳殻」という果実のもつ風趣が活かされている作品だ。『俳句四季』2023年8月号。