「初景色」は元日に眺める景色のことで新年の季語。日ごろ見慣れた景色も、新たな年を迎えた改まった心で眺めれば、格別瑞祥に満ちて目に映る。
掲句は荒彫りの彫刻を思わせる朴直な味わいの作品。「常念(じょうねん)」は常念岳のことで、北アルプス南部の常念山脈の主峰。安曇野からは全容が望め、ピラミッド型のその端正な山容は印象的だ。雪を被った常念岳を眼前にしながら佇む作者の密かな決意も感じられる清々しい一句。『俳壇』2024年1月号。
冬は、立冬(11月8日頃)から立春の前日(2月3日頃)までの期間のこと。「冬の午後」といえば、冬の一日の昼過ぎの時間帯をさす。
掲句は冬の午後を読書に過ごす静かな心持が伝わってくる作品。冬の日暮れの早さには急かされることが多いが、掲句には、まだ日暮れに間のあるゆったりと充実した時間の流れが感じられる。一日の残りの時間を惜しむ心持も漂っているようだ。『俳壇』2024年1月号。
鵙は、繁殖期が過ぎて秋になると、縄張りを主張して高い梢などで鋭い鳴き声を上げる。その声は澄んだ大気によく透る。秋の到来を感じさせる鳴き声だ。
掲句は「戰」の文字に口の字が二つあるとの、文字上の気づきを述べながら、戦争の絶えないこの地球上の現実に対する、作者の嘆きをそこはかとなく感じさせる作品。戦争を憤り、戦禍の惨状を嘆いても、そのストレートな表出だけでは文学作品にならないことは、実作者なら誰でも承知していることだ。この句は、あからさまな主観や感情の表出を避けながら、戦争というこの世の不条理に無関心ではいられない作者の心の内を覗かせている。鵙の無心の鳴き声が救いになっているようにも思える。『俳句』2023年12月号。