「桜貝」はニッコウガイ科の二枚貝。殻は薄く桜色で光沢がある。砂浜に打ち上げられているのを、拾って楽しむ。
掲句は、砂浜で桜貝を拾うという無償の愉しみと「小さな嘘」とを取り合わせた作品。だが、「小さな嘘」がどのような嘘なのか、作品には何の説明もない。いずれにしても、桜貝を拾っている作者自身の、或いは砂浜をともに歩いている年端の行かない子供などがついた他愛のない嘘なのだ。砂浜を歩いている二人を、穏やかな春の日差しが降り注いでいることだろう。「小さな嘘」という言葉のもつ可憐で微妙なひびきが、読者の想像を刺激する作品だ。『俳句界』2024年3月号。