モン・サン=ミシェルは、フランス北西部ノルマンディー地方のサン・マロ湾に浮かぶ小島と、その上にそびえる修道院。サン・マロ湾はヨーロッパでも特に潮の満ち引きが激しく、3月や9月の満潮時は 周囲の干潟が完全に海で満たされ、海にぽつんと浮かぶ孤島になるというが、干潮時には、 周囲に広大な干潟が現れ、かつて巡礼者たちが歩いて渡った地続きの道が現れる。
修道院は、狭い岩山の地形に合わせて、何世紀にもわたり増改築が繰り返されてきた。最下層に民家や商店、中層に要塞や騎士の部屋、そして頂点に修道院がそびえる構造は、中世の封建社会の階層をそのまま表しているという。
私たちは今回の旅行中、モン・サン=ミシェルを4回訪れた。最初は本土側の有料駐車場にレンタカーを停め、島の手前まで無料のシャトルバスに乗った。環境保護のため交通規制があり、車で島のふもとまで直接行くことはできないのだという。次の写真は、シャトルバス前方から撮ったモン・サン=ミシェル。

尖塔の先の大天使ミカエルが朝日を浴びて金色に輝いていた。ミカエルはキリスト教において神に最も近い存在であり、天の軍勢を率いて悪(サタン)と戦う総司令官。ガブリエル、ラファエルと並ぶ三大天使の一人。因みに、ミシェルはミカエルのフランス語読みであり、モン・サン=ミシェルを日本語に訳すと、〈大天使ミカエルに捧げられた聖なる山(島)〉ということになる。

修道院3階にある回廊。修道士たちが祈りを捧げ、瞑想しながら歩くための空間だったという。中庭には緑の芝生が広がっていた。壁に囲まれて生活している修道士たちは、ここから空を仰いで、外光を眩しみながら魂の解放を覚えていたのではないだろうか。

修道院内部の、聖マルティヌス地下礼拝堂。重厚なロマネスク様式のアーチや石造りの壁面が広がる祈りのための地下空間。11世紀前半に造られたというから、千年の月日が封じ込められた闇である。モン・サン=ミシェルにはこの外3つの地下礼拝堂がある。

城壁に設置されていた古い大砲。中世の百年戦争などで防御拠点として使われた歴史を伝える遺構である。彼方には、サン・マロ湾の干潟が広がっていた。

次の写真は、2度目に訪れたときのモン・サン=ミシェル。放牧している羊を隔てて眺めただけだったが、シャトルバスからの眺めとは全く違う光景に触れることができた。この地方はプレ・サレ(Pré-salé)と称するブランドラムの産地。満潮時には海の底になり、干潮時には陸地になる塩性湿地(ソルトマーシュ)に自生する草を食べて育ち、羊の肉に自然な塩味と独特のハーブのような風味が加わるという。私たちがスーパーで購入したラム肉はプレ・サレではなかったが、ローストにして美味しくいただいた。

4度目に訪問したときのモン・サン=ミシェル。自生のフェンネルの花を隔てて遠くから撮った。フェンネルはハーブや野菜として知られるセリ科の植物で、甘い香りがする。この後、アプローチの橋を渡って島内を散策した。島内では、大きな荷を背負って急な石段を上ってくる何人もの巡礼者に出会った。
