カンブルメールはノルマンディー地方にある人口約千人ほどの小さな村。シードル街道(La Route du Cidre)の中心地として知られる。周辺には、リンゴ畠の中にシードル(発泡性のリンゴ酒)やカルバドス(アップルブランデー)を醸造する醸造所が点在していた。なお、シードル街道は、1970年代以降に整備された、この地方を走る全長約40キロメートルの観光ルート。
次の写真は、村内で立ち寄った醸造所敷地内のリンゴの木。生食用のリンゴとは別の種類だという。ノルマンディ地方はフランス国内でも北寄りに位置し、曇りがちで比較的涼しい気候が続くため、ブドウの糖度が十分に上がらないなどブドウ栽培には適していないが、粘土質の土壌や冷涼な気候がリンゴ栽培に合っているのだ。ただ、私たちの滞在中は予想外の暑さで、夏のノルマンディ地方が冷涼な気候とも言えなくなってきているのは、気がかりなことである。

醸造所内には、シードルやカルヴァドス、ポモーの試飲や購入ができるコーナーがあった。なお、ポモーはリンゴ果汁とカルバドスをブレンドしたもの。次の写真は、醸造所内の赤レンガの炉を備えた蒸留器(アランビック)。ここでカルヴァドスを蒸留しているのだという。カルヴァドスは、シードルを蒸留し、オークの樽で長期間熟成させて作られる。

数日後に訪れたブブロン・アン・オージュ(Beuvron-en-Auge)も、シードル街道沿いの人口200人ほどの小さな村。次の写真は、村の中心部に立つサン・マルタン教会。教会に続く道の両側には、季節の花々が植えられていた。

村の中心部を流れるル・ドワ川。豊かな自然の中をゆっくりと流れていた。強い日差しの下で、菩提樹の木蔭が涼しかった。

ノルマンディ地方・ブルターニュ地方は言わば「リンゴの国」。滞在中に立ち寄ったスーパーには、いろいろな種類のリンゴが山積みになっていた。中央の赤黄2色のリンゴは今年収穫した早生種で、右側の青リンゴ(グラニースミス)と左側のゴールデンデリシャスは去年収穫したもの。高度な冷蔵・貯蔵技術によって、前年の秋に収穫したリンゴが、鮮度が保たれたまま店頭に並んでいるのだ。因みに、フランスでは国民の果物消費量の1位がリンゴ。旅行中の私たちもリンゴを沢山買い、コンポートにして美味しくいただいた。

ノルマンディ地方のオンフルールの町中にあった酒店。上の棚には、カルバドスやポモーの瓶が見える。

サン・マロの町中にあった雑貨店の店先。シードルカップが並んでいる。ノルマンディー地方やブルターニュ地方では、シードルをグラスではなく、陶器製のカップで飲む伝統があるという。私たちは、後日、スーパーで買ったシードルを夕食時に愉しんだ。アルコール度数はビールより低く、フルーティーで、呆気ないほど口当たりが良かった。余りに軽くて、物足りなく感じる人もいるかも知れない。

次の写真は土産に持ち帰ったカルヴァドス。ノルマンディー地方で作られる、リンゴを原料とした最高級の蒸留酒(ブランデー)である。瓶のラベルに製造者の名前が見える。アルコール度数が40%前後と高いため、フランス人は、食後小さなグラスに注いで、ストレートで少しずつ味わうという。その芳醇な香りを嗅ぐと、ノルマンディ地方やブルターニュ地方で過ごした数日が、改めてよみがえるような気がする。
