「梅雨兆す」は、梅雨が始まろうとしている気配や前触れのこと。本格的な梅雨が始まる前の、雨が降りそうな気配やじめじめとした空気感を指す言葉。
掲句は、地元のデパ地下の鮮魚売り場所見。蝤蛑(がざみ)はワタリガニのことで、産卵期を迎える初夏が旬。その頃から店先で目にすることが多くなる。殻から出る濃厚な出汁を活かしたスープ料理や炒め物にして食べるという。ワタリガニの青みがかった茶色の殻は、梅雨どきのささ濁った海原の色を思わせる。また、〈がざみ〉という強面(こわもて)の呼び名や漢字表記の難解な文字が、梅雨が兆す頃の季節感と合っていると感じた。令和8年作。