廣瀬直人の一句(37)

卯の花腐し俎に鱗散り 直人

「卯の花腐し(うのはなくたし)」は、旧暦4月(現行暦では5月頃)に降り続く長雨のこと。 その頃降る長雨で卯の花が腐る(朽ちる)ことからこの名がある。

掲句は、卯の花腐しの最中、厨房の俎の上に鱗が散っている情景を即物的に詠む。人影は見えないが、たった今捌いていた魚の鱗が俎板に飛び散っている。窓の外は、初夏の頃の明るい雨が降り続いている。割烹や旅館の厨房であっても、個人宅の台所風景であってもいいだろう。上五に「卯の花腐し」と置いたことで、季節の明るさに長雨を倦む思いが交じる。併せてかすかな魚臭も。平成5年作。『遍照』所収。

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