雨音を野の音として夏座敷 直人
「夏座敷」は夏向きにしつらえた、涼しげで開放的な座敷のこと。 襖(ふすま)や障子を取り外して風通しの良い簾戸(すど)や葭障子(よししょうじ)にしたり、畳の上に藤むしろや簟(たかむしろ)を敷いたりして、夏を快適に過ごす工夫をする。
掲句は、夏座敷に座して、雨音を野の音として聞いているとの句意。音を立てて降る雨が座敷に涼気をもたらし、読者も、その心地よさの中に引き込まれる。他方で、野を渡って来た雨が、野を渡って去っていくとの感受には、自らが、野のただ中に住んでいるとの諦念も感じられる。〈野に住めば流人のおもひ初つばめ〉という飯田龍太の初期の句が思い出される。長年住んできた故郷に対する思いの表裏を覗かせている作品である。昭和56年作。『朝の川』所収。