昼間見し田のひしひしと冷奴 直人
「冷奴(ひややっこ)」は、冷やした豆腐に生姜や葱などの薬味をのせて食べる庶民的な夏料理の一つ。見た目にも涼味を感じる素朴で手軽な一品。
掲句は、夕餉に冷奴を食べながら、昼間見た青田の光景が「ひしひし」と作者の眼裏に残っているとの句意。この句は、作者が『自作ノート』で「(塩田平は)寺から寺への間はほとんどが稲田で、時期は八月だったから日盛りの青さは格別に目に沁みた。」と記しているように、信濃旅吟の中の一句。穂を孕む前の稲の命の力が、「ひしひし」との擬態語によりよく表れている。昭和51年作。『日の鳥』所収。