「八月」は立秋を迎え、暦の上では夏から秋へと季節が変わる月。実際にはしばらく暑い日が続くが、盂蘭盆を過ぎる頃から暑さは盛りを越え、徐々に秋の気配が濃くなってゆく。原爆忌や終戦記念日、盂蘭盆など、過去を振り返ることが多い月でもある。
掲句は、一年の12カ月の中で、「八月」が「錨」だという。「錨」は船舶を停止させるため、鎖やロープを付けて海底に沈める鉄製器具。風や潮流で船が流されるのを防ぐ命綱の役割を果たす。確かに、先の大戦に関わる原爆忌や終戦記念日などは、この国や個人個人の今後の歩みを考える上で、忘れてはならない出来事。それらが巡ってくる「八月」は、特別な月に違いない。異色な作品だが、俳句を作らない人も含めて、大方の賛同を得られるのではないか。『俳句界』2026年4月号。