涅槃哭くみみずむかでも身をよぢり 柴田多鶴子

「涅槃(ねはん)」は、釈迦が入滅した旧暦2月15日(現在は新暦3月15日前後)に行われる法要。沙羅双樹のもとで横臥する釈迦を描いた絵が「涅槃図」。画面中央に横たわる釈迦と、それを囲んで泣き崩れる弟子、菩薩、鳥や動物たちが描かれる。

掲句は、涅槃図の画面に、鳥や動物たちに交って、「みみず」や「むかで」までが身を捩って嘆き悲しんでいると詠む。「涅槃図」には、釈迦の死を悲しむ存在として、象やライオンなどの大きな動物だけでなく、蚯蚓(みみず)や虫、さらに草木に至るまで、あらゆる生き物が描かれているケースが多くある。掲句の「みみず」や「むかで」も、作者がどこかの寺院で実際に目にしたものかも知れないが、恐らく想像力の賜物だろう。身をよぢりながら「涅槃」を悲しむこれら小動物の姿には、どこか可笑しみも感じられる。『俳句』2026年4月号。


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