母あればこそのふるさと十三夜 藺草慶子

「十三夜」は、旧暦9月13日の夜の月のこと。中秋の名月(旧暦8月15日)の約1ヶ月後、満月直前の少し欠けた月を愛でる日本独自の風習。「後の月」「豆名月」「栗名月」とも呼ばれる。少し欠けた月光が澄み渡るところには、物寂しい晩秋の趣がある。

掲句は、母亡き故郷に身を置いての作品。折からの「十三夜」の月光の中で、母が存命だった頃を思い起こしているのだろう。母が亡くなっても故郷との関係が絶えることはないが、やはり故郷は母が在ってこそのものだった、と。平明だが、普遍的かつ深い思いを宿す一句。『俳句』2026年4月号。


コメントを残す