廣瀬直人の一句(22)

晩春の引潮に乗る花の束 直人

「晩春」は春の終わりの頃のこと。具体的には、二十四節気の清明(4月5日頃)から立夏(5月4日頃)の前日まで。行く春を惜しみながらも、次第に夏の気配を感じることが多くなる。北国も雪解けが進み、春たけなわとなる。

掲句は海に供えた花束が、引潮に乗って岸を離れていく場面を詠む。津波や海難事故で亡くなった人への献花とも思えるが、どのような場面を想像するかは読者に任されている。「行く春」「惜春」「暮の春」より情を抑制した「晩春」という季語が、作者の一切の思いを受け止めて、さり気なく上五に置かれている。『遍照』所収。

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