遍照の夕日春田もその中に 直人
「春田」は 前年の稲の刈り取り後、麦などを植えずに春までそのままにしてある田、或いは耕して黒々と土が起きている田をいう。稲刈りの後そのままにしてある田には、ゲンゲやナズナ、ホトケノザなどが敷き詰めたように咲き盛る。
掲句には、「「白露」創刊自祝」との前書きがある。「遍照(へんじょう)」は仏の法身の光明があまねく世界を照らすこと。ここでは夕日が故郷の大地をあまねく照らしている様を言ったものだろう。一面の夕日の中の「春田」の華やぎは、作者が自らの作句により、また、俳誌の運営により目指そうとした豊穣の世界を象徴している。主宰として一誌を背負って立つ喜びと身の引き締まるような思いが自ずから滲み出ている。平成5年作。『遍照』所収。