みづうみの目覚めの音の春時雨 直人
「春時雨(はるしぐれ)」は立春を過ぎてから降るにわか雨(通り雨)のこと。冬の時雨には寂しさや冷たさがあるが、春時雨には春らしい明るさや華やぎが感じられる。
掲句は「春時雨」が湖に降りそそぐ音を、その湖の目覚めの音と感受しての作品。春の到来を音により感受した句だが、冬季間結氷していた湖が、春になって氷が解け、折りからの「春時雨」にけぶっている様が、自ずから思い浮かぶ。格助詞「の」を3度用いた単純な声調に、春を迎えた弾むような喜びがある。富士五湖のような山間の湖を想像すると、一層味わい深い。平成5年作。『遍照』所収。